迫りくる首都直下地震に向けて作られたNHKの地震スペシャルのレビューです。
MEGAQUAKE 巨大地震~軟弱地盤~迫りくる脅威(NHK公式サイト)
今年の始め(2024年1月1日)に石川県の能登半島を襲った震度6強~7の大型地震では、同地域に大きな被害をもたらしました。
家屋の多くが倒壊し、都市部では高層ビルも転倒する大被害に至っています。
今回のNHKスペシャルではそうした被害の直接の原因になった「家屋の倒壊」、それをもたらした「基礎杭」「軟弱地盤」に焦点を当てた放送内容になっています。
その情報のまとめと感想を述べていこうと思います。
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杭基礎と軟弱地盤
当時の現場の様子を捉えたカメラでは、激しい揺れで木造家屋が次々に倒れていく様子を生々しく映し出していました。
耐震構造が堅牢なはずのビルの倒壊も発生した映像もショックでした。
ただ輪島市で起きた鉄筋ビルの倒壊は、これまでの「柱や梁が壊れる」従来のパターンではなかったことも指摘しています。
その原因は「杭基礎」。
「杭基礎」とは建物の底から地中深い部分に埋め込まれた基礎構造の部分で、強度の高いコンクリートなどで作られています。
それが長い揺れによって寸断されたのです。
加えて「地盤の弱さ」がそれに輪をかける状況になりました。
砂や土が運ばれて埋め立てられた土地は軟弱地盤と呼ばれ、固い地盤に比べて揺れを何倍にも増幅する結果になるのです。
輪島市の中心部は軟弱地盤の可能性が高く、それによって揺れを増幅してしまい、さらには杭基礎の弱さが被害に輪をかける形になってしまいました。
市営住宅やホテルも使用不可能に
住民の移転を余儀なくされた市営住宅では、建物の杭基礎が建物から引きちぎられ、1.5メートルも離れていたことが撮影されていました。
ホテルも建物自体が数か月かけて傾いていき、取り壊すことも決定しています。
経営者が「この場所で再建してもよいのか」と悩んでいる様子も映していました。
同様の被害を受けた建物が市内には多くあり、これからの生活再建に不安を抱く住民の苦悩が伝わって来るようでした。
求められる耐震基準の更新
地震が多い日本では、建物の耐震基準を定めることで、揺れによる被害を最小限にとどめるように決められています。
1981年には「震度6以上でも倒壊しない」新耐震基準が定められています。
ただこの基準には基礎が含まれていませんでした。
杭基礎の耐震設計が義務付けられたのは、2001年になります。
この改定でも「高さ60メートル以上の建築物は除く」ことになっていて、含まれる高さの建物でも「震度5強程度の想定」にとどまっています。
今回の輪島の地震で現行の耐震基準で建てられたビルも傾く被害が出てきており、基礎部分の耐震基準の改定が強く望まれるところ。
とはいえ、現状では基礎の補強は技術的な難しさがあり、そのコストも大きな負担になると言われています。
軟弱基盤がもたらす大都市の被害リスク
輪島市の軟弱地盤のリスクは全国にも存在します。
大都市でいえば「大阪」「名古屋」「東京」ということ。
とくに日本最大の軟弱地盤が広がるといわれる関東一帯は、その代表例になります。
大きな河川があり、そこから大量の土砂が流れてきて作られた関東平野。
海の上に作られた埋立地や人口島と同様に、地盤の弱さが顕著に表れる地形だと言えます。
特に河川沿いは柔らかい地盤で成り立ってるため、地震の被害のリスクが非常に大きいということ。
最悪なのは関東の軟弱地盤では、1995年から2020年の25年間で増加した人口は197万人となっていることで、大地震が発生した場合の被害リスクは甚大なものになるだろうということ・・・
もし東京直下型地震が発生した場合、想定される建物の被害は全壊が17万5千件で、死者は2万3千人に上ると試算されています。
さらにこれらの国の被害想定は「軟弱地盤の上に立つビルの杭基礎への影響は考慮されていない」ということ!
つまりは想定以上の被害が出ることは明らかなのです。
倒壊した古いビルが隣接する建物に傾くことで被害が連鎖し、道路側に倒れることで交通渋滞が発生するということ。
さらに国が指定する避難場所のホテルやビルが倒壊することで、帰宅困難者の避難場所が不足する可能性もあります。
地震のリスクを知ることが重要
悲惨な予想ばかりになってしまいましたが、最後は専門家による提言もなされていました。
何よりも地震による被害リスクを知ることが大事といいます。
その部分は詳しく説明されていませんでしたが、私なりに解釈すれば「最悪の状況を想定し、それに沿った避難計画をオリジナルで作っておくこと」になるのかと考えます。
基本的には国や自治体が設定した避難所は当てにならないと初めから考え、自分や家族、身の回りの人がどうやって生き延びていくかをそれぞれがオーダーメイドで考えていくことが必要。
備蓄や避難経路の確認、外出時の携行品など、防災に意識のある人であれば、普段通りの行動と思考をしていれば、多くのことがしのげるのではないかと予想します。
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一定期間を凌げれば、あとは国や自治体による支援が必要になってきます。
そこに関しては先ほどの専門家が「倒壊するビルが緊急輸送道路をふさがないことが肝要」と注意を促していました。
緊急輸送走路は緊急時に使う車両の移動に使われる道路で、そこに倒壊したビルが塞いでしまうと、救援物資や人命を救う車両の移動が阻まれます。
東京都内に張り巡らされた緊急輸送道路では、周辺のビルの耐震診断が義務付けられており、それは上記の理由によるものといわれています。
東京以外の全国の地域でも緊急輸送道路は設定されており、国土交通省のサイトでそれを確認することができます。
また軟弱地盤の情報についても、現在ではNHKスペシャルの公式サイトで公開中です(恐らく期間限定)
興味がある方は以下のホームページをそれぞれご覧ください。
番組内容のポイントと住宅の地震対策まとめ
以上が番組で取り上げられた内容の大まかなまとめ情報になります。
放送では高層ビルや高層建築の杭基礎に焦点が当てられていましたが、低層の戸建てでも同様の基礎構造物は「杭打ち」という形で行われており、今回の番組内容の問題も当てはまる部分はあるかと思います。
重要なのは、
・建物がいつ作られたのか?(最新の耐震基準に沿っているか)
・建っている地盤が軟弱なのか固いのか?
という部分。
なので具体的には、
・現在住んでいる建物の年数
・住んでいる場所の地盤
・住んでいる地域が大型地震(南海トラフ、東京直下型)の被災範囲に入っているかどうか
をチェックしたうえで、
・引っ越しを検討する
・建物を補強する
・そのまま住み続ける
を決めるということが重要になるかと思います。
それぞれの条件に合った地震・住宅対策を検討することで、来るべき大地震に備えていければと思います。
以下は当ブログで紹介してきた「住宅の防災情報」になりますので、よければ参考にしてください。
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